今から約10年前、ひょんなことから知り合った先輩経営者の方々と勉強会を行っていた時のメンバーの一人が、後藤大悟さんでした。その勉強会では、人に伝わるスピーチとは、みたいな内容を講師の先生にスパルタで鍛えていただいたり、最近やたらと流行っているMBTIについてレクチャーを受けて、自社へ持ち帰って実施したりと、なかなか同じ業界の中で尊敬出来る先輩経営者が見つからない中、異業種の先輩経営者の皆さんに揉んでいただくことで、自分の視座を上げられる大切な場でした。
先輩経営者の皆さんは私以上に変わった方ばかりで、その中で後藤さんは真面目、堅実、着実というイメージを勝手に抱いていましたが、今回のインタビューで完全に覆されることに。当時の私には後藤さんの本質を見抜けるだけの力量が無かったのであろうと率直に思いますが、今回の取材内容、皆さんはどう思われたでしょうか?
最終稿には一切出てきませんが、書き起こしの文中にはサイコパスというワードが複数回出てきています。同業で3年間修行して帰って来てすぐに業務改善を次々に行い、それが完遂した後はどんどん新規クライアントの開拓を行って、既存の事業の中で新しい取り組み、新しい売上を取りに行く。これだけでも後継者のお手本中のお手本のような動きですが、絶対にその全ての動きの中で起きているはずの摩擦を全く意に介さず、ただひたすら淡々と進めていく。これをサイコパスと言わずに何をサイコパスと言うのだとすら思います。断っておきますが、この場合におけるサイコパスは最高の褒め言葉。サイコパスでないと、古くから続く会社を良くすることなんて出来ないのですよ。
そしてお父様が亡くなったことで起きた変化に対して、あっさりと辞める決断をし、自身で事業を進めていくメンタリティ。強い、でも頑なではなく、しなやかでもあります。
ご本人の口調を反映して、さらっとした文体で表現はしていますが、実際に起きていることはなかなか壮絶なことです。でも、そう感じさせず、ただただ未来を向いている後藤さんの前向きな姿勢は、世襲のウェットな世界観を吹き飛ばす力がありました。
意識してトレースしているわけではありませんが、結果的に創業者と同じような道を歩んでいるような気がしますね。
「後継者を辞め、起業。その先へ」後継者たち 第2話 コールドストレージ・ジャパン株式会社 後藤大悟社長 後編
この言葉、とてもとても同意しました。というのも、後藤さんと創業者の方のスケール感とは比較になりませんが、私も同じような感覚を持ったことがあったのです。
京朋さんは、あまたあった「潰し屋」の中では比較的歴史が浅い新興企業でしたが、創業者の大江茂さんの圧倒的な経営手腕でダントツぶっちぎりの儲け頭に成長していかれました。特に、「付下げ」と言う訪問着の簡易バージョンの発明が、着物のナショナルチェーンの黎明期と合致し、着物業界を代表する超高収益企業になっていかれました。
第1回「連載開始に際して」 | たんす屋創業者 中村健一の回顧録
京都の正絹着物の世界で一時はトップシェアを誇っていた会社が、社屋の道路沿いに着物レンタルをやっていますというのぼりの旗を出し、老若男女、あらゆる国籍のお客様が洋服姿で来店され、着物姿でお出かけされていく姿は、業界に衝撃を与えたようだ。
第11話 ゴールドラッシュ | 後継者
上記の二つのエピソードは、それまで高価すぎて手に届かなかった着物を大衆化するべく、新しい商品・サービスを開発し、安価に提供することで市場を広げるという話です。時代が変わって物販からサービスに形態を変えただけで、本質的にやろうとしていることは祖父と一緒だなと、当時も感じていました。だって、同じですよね?実際。
一般的に父や祖父と悪癖が似ている時に、血は争えないというフレーズを言われることがありますが、上記のような良い意味での血は争えない話、後継者にはまだまだ沢山あるような気がしています。
後継者たち、月にお一人は取り上げていきますので、引き続きご愛好いただければ幸いです。