「後継者を辞め、起業。その先へ」後継者たち 第2話 コールドストレージ・ジャパン株式会社 後藤大悟社長 後編

目次

現役社長である父の急逝後に起きた出来事、そして起業へ。
後継者で「あった」後藤大悟社長が手掛けるコールドストレージ事業の未来とは。

父の急逝後、副社長であった叔父が社長に就任します。私が入社してから行った業務改革のこともあってか、元々叔父とは折り合いがあまり良くありませんでした。真意は分かりませんが、叔父が社長就任後、私をオミットするような動きが多く見受けられるようになります。私自身が所謂窓際のような部署に異動させられたり、私の近くで仕事をしていた社員を他部署へ異動させたりと、割とあからさまに排除の動きが増えてきました。

そこで抵抗したり、戦うことは一切しませんでしたね。相続税の問題もあって、株を相続することもなく、私は父が亡くなった後しばらくした頃には退社することを心の中で決めていました。

実は、その時すでに現在手掛けているコールドストレージ事業の構想が進行しており、その将来性に自信を持っていたこともあります。本当は家業の会社で新規事業として行う想定でしたが、それが叶わないのであれば、自身で独立してやろうと決意しました。

いざ家業の会社を辞めるとなったら、同業者や地元の人たちは騒然としているような気配はありましたが、当事者である自分は淡々としていましたね。

亡くなった父親とは、会社のことで表立って揉めることはあまりありませんでした。私が新しい仕事をどんどん取ってきたり社内改革をすすめるなど、自由に仕事をしていて、父親からすると制御ができない一人商店のような状態になっていたこともあるのでしょう。私としては、それは将来会社を継ぐために必要なプロセスだと心の底から思っていたのです。私の代で新しい会社を作る、正に第二創業を実現させるぐらいの気持ちを持って仕事に取り組んでいましたし、そのための基盤作りを業界内でも進めていました。

振り返ってみると、小さい頃から家業との距離感は近かったですが、脈々と受け継いできた事業を自分の代でも継承していくという感覚は無く、自分自身のやりたいことを社業を通じてどう実現させるかという欲求の方が強かったのでしょうね。だから、社内で徐々にオミットされていった時も、会社へ残ることへの執着は無く、時間を無駄に消費するよりもそれなら自分で会社を作って事業をやろうと思ったのだと思います。

元々、今ある会社をどうしていくかとか、日々の食い扶持をどう稼ぐかとかには意識が向いてなかったのか、世の中全体を良くしたい、面白くしたいみたいな意識は凄く強いですね。家業を継ぐという意識から、社会全体、地球全体にアプローチしたいという方向性にスイッチしたきっかけは、大学時代に開発経済学を学んだことも大きいですし、さらにゼミの大先輩である井上英之さんの著書を読んで、”社会起業家”という言葉を知ったことです。社会起業家という事を意識した時に、創業者である後藤勝造も明治の初期に日本を新しく作るという思いで業界の垣根などなく、日本国内や当時の台湾で物流業だけでなく旅館を営んだり、鉄道の社内で食堂車を事業として始めるなどの歴史を聞いて育っていたので、社会起業家としての在り方に共鳴したのかもしれません。

また、出張で訪れた門司の出光博物館で、出光佐三さんの業績を目の当たりにしてからは自分自身が仕事を通して国や社会の役に立つことをとても意識しました。当時はまだ『海賊と呼ばれた男』が世に出る前でしたが、『日本人にかえれ』などの著書をすべて取り寄せて読み、知り合いにも配って読んで欲しいと話していたことを思い出します。

この世に生まれたからには世の中を良くする、企業も社会を良くするために事業をする、それが当たり前という感覚が強いので、特別なことだという意識はありません。きっと、家業の創業者も明治の初期に同じような感覚を持っていたのでは無いかと思います。

意識してトレースしているわけではありませんが、結果的に創業者と同じような道を歩んでいるような気がしますね。

 

現在手掛けているビジネスについてですが、”コールドチェーンが変れば世界が変わる”を掲げて、小型のコールドストレージを活用する事で世界中のあらゆる場所にコールドチェーンをつなげる事を目指しています。

現在のコールドチェーンは中央集権的な構造のため、大量輸送・長距離輸送が必要となるため輸送上の無駄が多く、フードロスも発生しています。そこで、私の会社では小型コールドストレージを多極的に配置する多極分散型コールドチェーンを結び、生産地と消費地を直接つなげる事で、輸送コストが削減できたり、地産地消が推進されたり、離島や中山間地からも新鮮な生鮮品の輸送ができるようになります。その事によって、冷蔵冷凍物流においてもフィジカルインターネットを実現し、コールドチェーンが結ばれていない事で起こっている様々な社会問題、都市部と郊外の生活の質QOLの格差解消、フードロス、物流2024年問題、害獣駆除対策(ジビエの流通促進)を実現させる事ができます。

当社のコールドストレージボックスは冷蔵冷凍を「どこでも」「安価に」「省エネルギー」で実現するために、2023年秋に特許を取得したコンテナ型(商品名:Coldstorage Box)やトレーラ型(商品名:Coldstorage Board Portable)で製造しています。トレーラタイプは100vの家庭用電源で使える冷蔵冷凍トレーラを開発しました。また、オフグリッドタイプを開発したことで、発展途上国や国内の中山間地域や離島、あるいは災害地などでも活用出来るようになっています。現在は、屋外イベントなどでの活躍の機会が多く、イベント会場での食材の保管、輸送の効率化、アイスクリームなどの提供商品の拡大、さらには熱中症対策などにも活用されています。

起業して間もなくコロナ禍に見舞われましたが、コロナも終息し、ここ最近の商談の動きは非常に活発になってきました。今後もより一層、事業の拡大に邁進していきたいと思います。

コールドストレージ・ジャパン株式会社

次世代コールドチェーンプラットフォームを構築を目指すスタートアップ企業。 これまで冷蔵・冷凍物流がなかった場所でも手軽に素早く輸送網を構築する事ができる冷蔵輸送場所(コールドストレージ)の開発・販売・レンタル及び大手企業とも共同で関連する鮮度保持技術や急速冷凍・輸送システムの構築・導入を行っている

業種倉庫・運輸関連業
本社所在地兵庫県神戸市中央区山本通2-14-22プレジデントコート3階
代表者後藤大悟
ホームページhttps://cold-storage.jp/
Facebookhttps://www.facebook.com/Coldstoragejapan
Youtubehttps://www.youtube.com/channel/UCHiG5PR5rrUU00Mjwno-bLw
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

サクセッション 編集長
1981年 京都生まれ。2006年 立命館大学卒業後、祖父が創業して父が経営していた着物メーカーに後継経営者として入社。父の急逝に伴い、2007年に代表取締役に就任。2017年に祖業を事業譲渡。その後、自身で立ち上げた事業も2018年に事業譲渡後、官民ファンドであるREVICの再チャレンジ支援によって法人は和解型の特別清算処理を行った。2018年に事業承継・レンタルビジネス・ECコンサルティングを手掛けるDEPLOY MANAGEMENT株式会社を設立し、現在までに多数のクライアントの課題解決を手掛けている。

目次