
中央区日本橋人形町3-5-8、これが東京山喜の本社屋でした。2020年に売却しその後長く一階には、「築地の源ちゃん」という飲食店が入っており、とてもよく流行っていましたが、現在Googleマップで見てみると、更地になってコインパーキングになっています。2006年にたんす屋の営業本部を五反田TOCに移転し、一階をセブンイレブンにお貸ししました。なんと20年の契約です。実は当時最初に店子として手を挙げて頂いたのは、「am/ pm 」でしたが、それを熱心にひっくり返してきたのがセブンイレブンでした。人形町駅から徒歩約1分の十字路の角地という好立地と、約80坪というコンビニにとってちょうど良い広さのためだと思います。
実際の契約に至るまで繰り返しセブンイレブンの本部の方とお話しをする機会があり、そこでセブンイレブンのフランチャイズビジネスの考え方を大いに学びました。当初セブンイレブンは、全国に点在する個人商店をターゲットに加盟店を増やしていきます。1974年にオープンした江東区豊洲の一号店のフランチャイジーは、街の酒屋でした。ダイエーやヨーカ堂が大量出店するなか、街の個人商店は酒屋も米屋もことごとく苦戦を強いられ、彼らの多くがコンビニの加盟店になっていったわけです。FCの本部にとっても、店舗という不動産があり、個人商店のオーナーという商人がいるわけですので、スピード感をもって一気に店舗展開が可能になったと思います。この様なモデルをセブンイレブンではAパターンと呼んでいました。
しかし、弊社がセブンイレブンと契約をした当時は、主流はもっぱらBパターンに代わっていました(現在では、Cパターンと呼んでいるそうです)。Bパターンでは、もっぱら本部が物件を探して用意します。そしてフランチャイジーは個人商店ではなく、脱サラや転職希望者です。私が非常に驚いたことは、セブンイレブンと契約を結んで、店舗の開店日が決まり、内装工事が着々と進むなか、一向にフランチャイジーが決まらないことでした。それでも、セブンイレブンの本部の方は焦る様子も無く、開店日の10日ほど前になってようやく、フランチャイジーの方を伴って来られます。30代後半のよく日焼けした男性とその奥様が、店長と副店長ですとご挨拶をされました。私は少し驚いて、今まではどの様なお仕事をされていたのですか、とたずねると「佐川急便でセールスドライバーをしておりました」とお聞きし更に納得した次第です。
つまりセブンイレブンの黎明期は、大型スーパーの台頭で苦戦を強いられた街の個人商店をターゲットに加盟店を増やしていき、次の段階では戦略的なマーケティングで本部が店舗開発を行って、不動産も無く資金もさほど無くても「勇気とやる気と元気」のある個人オーナーを募集する方向に戦略転換していたことを、目の当たりにしました。
たんす屋のフランチャイズビジネスのスタートは、やまとの店舗を圧縮してスタートしています。つまり加盟店の店舗を利用して、商品とノウハウをご提供しロイヤリティを頂戴しておりました。しかしながら、加盟店の所有する店舗を利用するか、または加盟店に自ら店舗を賃貸借契約を締結してご用意して頂くかでは、フランチャイジーのターゲットは非常に限定的です。更にもう一つの問題ですが、フランチャイジーに「勇気とやる気と元気」があっても、佐川急便のセールスドライバーの方がたんす屋のフランチャイジーになり店長になるには、相当ハードルが高いということを言わざるを得ません。ここに着物というアイテムの特異性があります。
そこで私が開発したたんす屋ならではの、フランチャイズビジネスのBパターンです。具体的には、既存の直営店を店長経験のある個人にオーナーになってもらうことでした。このモデルのパイオニアになってもらうために、白羽の矢をたてたのが、きもの専門店「さが美」のOBの伊藤力男さんです。当時着物市場が急速にシュリンクするなか、やまとに限らず多くのNC(ナショナル、チェーン)と呼ばれる大型きもの専門店は大胆なリストラを実行しておりました。たんす屋が数年間で100店舗を達成できたのも、数多のNCのOBの活躍無くしては語れません。
伊藤力男さんにたんす屋としては、従来のフランチャイズビジネスAパターン以外に、主に個人を対象としてBパターンを開発したい旨を伝えました。伊藤力男さんの判断は素早く、「新宿サブナード店」ならば即刻オーナーになりたいとの返答でした。結果的に、本部が開発した店舗をフランチャイジーが経営すると言うBパターンが誕生します。直営店をBパターンでFC化することの効果は絶大で「新宿サブナード店」の売上は順調に伸び、本部も加盟店のオーナーも共にウインウインの関係を築くことができました。
このモデルの成功を見て多くの「さが美」のOBが後に続きます。香坂さんの「神楽坂店」、山口さんの「吉祥寺店」、松橋さんの「浅草店」、柳田さんの「北千住店」など、すべて「さが美」のOBが経営をして業績を伸ばしてくれた店舗です。このようにして、やまとに頼まれてスタートしたたんす屋のフランチャイズビジネスは、自らのフランチャイズモデルのBパターンを開発することで次のステージへ進むことができました。
